日油グループのサステナビリティ
気候変動への対応・自然資本の保全(TCFD/TNFD)
TCFD・TNFD提言に沿った情報開示

方針(基本的な考え方)
気候変動への対応および自然資本(生物多様性・水な ど)の保全は世界共通の喫緊の課題です。これらの課題に取り組まなければ、異常気象や食糧危機、水資源の減少などのさまざまな脅威をもたらします。パリ協定や昆明・モントリオール生物多様性枠組では、企業が課題解決に向けて取り組むことの重要性が強調されています。
TCFD・TNFDの提言への賛同・参画
- 日油グループは、2022年4月に「気候関連財務情報 開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。また、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」提言に賛同し、2025年1月にTNFDフォーラムへ参画しました。
- TCFDおよびTNFDの両提言を踏まえて、気候関連および自然関連のリスク低減と成長機会の創出に努めるとともに、情報開示の拡充に取り組んでいきます。
- 日油グループは、TCFDおよびTNFDの両提言に沿って情報開示した対応により、「NOF VISION 2030」に掲げる豊かで持続可能な社会の実現に向けて、化学の力で新たな価値を協創していきます。


気候変動に関する方針
温室効果ガス削減の方針
気候変動は、主に化石燃料の消費による温室効果ガスの排出増加に起因しています。この悪影響は、豪雨や洪水などの自然災害の増加、食糧資源や水資源の減少、猛暑や感染症の発生などに表れており、私たちの生活や生態系に大きな脅威をもたらしています。
私たちは、パリ協定で定められた目標である平均気温上昇を2℃よりも十分に下回ること(2℃目標)や、可能な限り1.5℃まで抑える努力を支持しています。
気候変動の緩和と脱炭素社会の実現に向け、私たちは、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出削減中期目標として、2030年度までに2013年度比で40%以上の削減を掲げ、温室効果ガスの排出削減に積極的な取り組みを行います。
私たちは、自社の温室効果ガスの排出削減に注力するだけでなく、サプライチェーンの中で、原材料の調達、効率配送や、環境配慮型の製品とサービスの提供を通じて、気候変動の緩和に貢献していきます。私たちは、持続可能な未来のために行動を起こし、社会とともに成長していく決意です。
GHG削減戦略
私たちは、レスポンシブル・ケアに関わる経営方針やCSR調達方針を策定、公開し、サプライチェーン全体における温室効果ガスの削減対策への取り組みを宣言しています。
方針を実行するため、グループ内に対し、レスポンシブル・ケア指針として、気候変動の緩和・適応をはじめ、生物多様性、資源循環のほか、研究開発や製造などの指針を定めています。
生産拠点では、Scope1に対して低負荷エネルギーへの転換、Scope2を合わせて、エネルギーの効率的利用、Scope3の各カテゴリーに対応した取り組みを進めています。また、気候変動緩和や適応に寄与する環境関連製品群の研究開発を推進しています。
外部調達する原材料については、CSR調達ガイドラインの制定により、低環境負荷の原料調達を推進するため、サプライヤーの認識の向上を図り、それを実践すべく、サプライヤーとのパートナーシップ構築宣言を行い、持続可能な調達活動を推進しています。
さらに、私たちは「(一社)日本化学工業協会」のレスポンシブル・ケア活動の一環として、サプライヤーや地域との対話活動にも積極的に参画しています。
加えて、私たちはサプライチェーンにおける脱炭素のイノベーションにも取り組んでいます。産学連携プロジェクトによるバイオマス由来原料や未利用廃熱の有効活用を研究開発しています。
これらにより、Scope3における温室効果ガス排出量の削減と、サプライチェーン全体の持続可能性を向上させています。
業界団体を通じた活動
日油は、2050年のカーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、グリーントランスフォーメーション(GX)への挑戦を行い、現在および未来社会における持続的な成長の実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官・学とともに協働する「GXリーグ」に参画しています。また、代表取締役が理事を務める「(一社)日本化学工業協会」をはじめ多くの業界団体に加盟し、それぞれの団体で議論される、気候変動の課題解決に向けた方針や最新の動向を積極的に取り入れ、日々の活動に活かします。また、団体ごとの目標に取り組むとともに、日油としての方針や戦略に矛盾が生じないように、整合性を図っています。
さらに加盟する「日本石鹸洗剤工業会」では、代表取締役ほか日油役員が定期的に理事として環境委員長を務め、業界全体の環境問題の諸課題対応に尽力しています。
自然資本に関する方針
自然資本を守るための日油の取り組み
日油グループは、自然資本の保護と回復に積極的に取り組むことを重視しています。そのため、以下の方針を定めています。
- 事業活動における自然資本への影響を最小限に抑えるため、環境影響評価を実施し、リスクを特定し対策を講じます。
- 自然資本保護に関連する国際的な指針や法令を遵守し、環境保護に取り組むことを従業員に求めます。
- 自然資本の損失を引き起こすサプライチェーンのリスクを評価し、サプライヤーとの協力を通じて持続可能な調達を推進します。
- 従業員や関係者に対して環境意識の向上と自然資本保護の重要性を啓発するための教育プログラムを提供します。
- 地域コミュニティと協力し、地元の生態系保護活動や自然資本回復のための各種プロジェクトに参加します。
これらの取り組みを通じて、自然資本の確保に貢献し、より持続可能な未来を実現します。
TNFD提言における一般要件
- マテリアリティの適用
本開示におけるリスク・機会の評価では、日油グループのリスクマネジメントやTCFD開示との整合の観点からシングルマテリアリティアプローチを採用しました。 - 開示の範囲
「戦略」の「Scoping:分析対象範囲の設定」をご参照ください。 - 自然関連課題がある地域
自然関連課題がある地域として、「(2)開示の範囲」に該当する日油グループの全生産拠点および原材料の生産地や調達先拠点を選定し、分析しました。分析結果の詳細については、「戦略」をご参照ください。 - 他のサステナビリティ関連の開示との統合
気候変動への対応および自然資本の保全について統合的に開示しています。 - 考慮する対象期間
リスク・機会の評価に用いる時間軸として、短期(2023~2025年)、中期(2030年頃)、長期(2050年頃)を設定しています。 - 先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
「ガバナンス」の「ステークホルダー・エンゲージメントの監督」をご参照ください。
ガバナンス
気候変動への対応および自然資本の保全に関するガバナンス体制
日油グループでは、サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)に関して、取締役兼執行役員と役付執行役員で構成する政策会議、ならびに社長を委員長とし、すべての取締役が参加するCSR委員会における審議を経て、取締役会で承認しています。CSR委員会は、主管組織・担当部門である経営企画部、技術本部、人事・総務部、資材部、コーポレート・コミュニケーション部が、同委員会の事務局として、グループ全体のサステナビリティに関する戦略の策定・具体的な展開を推進しています。同委員会ではマテリアリティについては、毎年、レビューを実施し、マテリアリティの項目・KPI・目標値・対応方針を見直すことで、活動レベルの継続的な向上を図っています。
気候変動および自然資本への対応は、中長期目標を含む重要事項などとして、CSR委員会で審議しています。リスクについては、リスク管理委員会が網羅的なアセスメントを実施し、RC委員会がリスク対策・温室効果ガス排出量・汚染物質・ゼロエミッションなどの削減施策を主管してモニタリング・進捗管理しています。また、機会については、経営幹部会議、重点事業検討会などで議論し、重要事項については、経営審議会で審議しています。ガバナンス体制において、これらの委員会は取締役会の監督のもとで活動し、その審議結果を取締役会に報告しており、年1回または2回の定期報告に加え、必要に応じて開催した委員会・会議の協議内容についても随時報告し、監督・承認を受ける仕組みを構築しています。

気候変動への対応・自然資本の保全に関するガバナンス体制図
ステークホルダー・エンゲージメントの監督
ステークホルダー・エンゲージメントは企業の長期的な成長と持続可能性を確保するために不可欠であると考えています。日油グループの事業活動が先住民族、地域社会などに影響を与えている可能性があるため、CSR調達方針やCSR調達ガイドラインの策定、地域社会との対話を実施するとともに、ステークホルダー・エンゲージメントの取り組みについて、前述のガバナンス体制にて協議・監督を行っています。
戦略
TNFDは自然関連課題の評価のための統合的なアプローチとして、LEAPアプローチを開発し、その使用を企業へ推奨しています。日油グループはこのアプローチに基づき自然関連課題の評価を進めました。
LEAP アプローチに沿った分析
LEAPアプローチとは、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのプロセスです。「LEAP」は自然に関して影響度が大きい地域、つまり優先地域を特定するLocate、自然への依存と影響の特定・診断をするEvaluate、自然に関するリスク・機会の特定・評価をするAssess、情報開示の準備をするPrepareの頭文字をとったもので、それに加え、最初に、分析対象範囲を設定するScopingの入った手法です。
近年、生物多様性をはじめとした自然資本の損失が新たなグローバルリスクとして関心を集めています。日油グループでは、パーム油などの自然由来の原材料を使用しています。そのため、自然資本の損失を重要なリスクと認識し、自然資本の保護に関する方針を定め、積極的に取り組んできました。
2023年度からTNFDが推奨するLEAPアプローチに基づき、自然資本との関連性(優先地域)の把握、依存・影響の特定・評価、リスク・機会の特定・評価を行いました。

Scoping 分析対象範囲の設定
日油グループは自然資本との関連を分析する対象範囲を、「日油グループのすべての生産拠点」および、バリューチェーン上流における分析においては、事業規模と自然への依存度・影響度の大きさを踏まえ、機能材料事業と機能食品事業が使用する動植物由来原料産地を分析対象としました。

Locate 自然との関連性の把握(優先地域※の特定)
日油グループ各社が直接操業している「日油グループのすべての生産拠点」とバリューチェーン上流にあたる「動植物系原料産地」について、位置情報をもとに自然との関連性を把握しました(詳細な位置情報を得られない場合は、入手可能な情報をもとに場所を推定しました)。
具体的には、自然への影響度(下表)の観点と、自社への影響度(生産数量・仕入金額)の観点を総合的に考慮することで、各生産拠点・原料産地が優先地域に該当するかを確認しました。その結果を下図に示します。日油グループの優先地域は、生産拠点としては、動植物原料を使用する日本であり、具体的には、機能材料事業の尼崎工場と機能食品事業の川崎事業所・大師工場と特定しました。優先地域の原料産地としては、パームを栽培するインドネシアとマレーシア、牛・豚の産地である日本、大豆を栽培するブラジル、乳製品の産地であるニュージーランドと特定しました。またこれらの原材料のうち、豚/パーム/大豆/乳製品を、最優先食品原材料と認識しました。
自然への影響度
自然への影響度 | 説明 |
---|---|
❶ 生態系の完全性:低下 ※1 | 生態系のバランスが崩れたり、健康な状態が損なわれたりしている地域 〔例:森林が伐採される、湿地が埋め立てられる、川が汚染される地域〕 |
❷ 生物多様性の重要性:高 ※1 ※2 | 生物多様性(さまざまな動植物や微生物の多様性)にとってとても重要性が高い地域 〔例:絶滅危惧種が多く生息している場所や、動植物の生息地として欠かせない地域〕 |
❸ 生態系の完全性:高 ※1 | 生態系が非常に豊かで、元の状態をよく保っている地域 〔例:手付かずの森林や、汚染されていない川がある地域〕 |
❹ 水リスク:高 ※3 ※4 | 水の供給が不足している地域(渇水リスク)、洪水や水害が起きやすい地域、 水が汚染されている地域 |
❺ 生態系サービス提供の重要性:高 ※5 | 先住民族/地域コミュニティに対して「生態系サービス」提供が重要な地域 「生態系サービス」:自然からの恩恵である、供給サービス(食料、水、木材、燃料など)、 調整サービス(気候調整、水質浄化、洪水や干ばつの緩和など)など |

日油グループの優先地域
(拡大図はこちら)
上記表1~5の自然への影響度は[※1~※5:TNFD推奨の「自然への影響度」評価ツール]を用いて評価した。
- WWF Biodiversity Risk Filter
- Key Biodiversity Areas
- WWF Water Risk Filter
- WRI Aqueduct 4.0
- Global Forest Watch map, SIGWATCH
Evaluate 依存と影響の診断
前記のScopingからLocateにて対象とし特定した動植物原料を使用する尼崎工場と川崎事業所(大師工場)の各々の製品の事業である機能材料事業と機能食品事業について、ツールとしてENCORE※1を使用して、自然への依存※2と自然へ与える影響※3の特定と診断をしました。具体的には両事業のバリューチェーンの上流(原材料の栽培・畜産・輸入・加工)、自社(製造)および下流〔製品の保管・輸送、顧客による製造(前記の自社工場製品を原料として使用)〕の各工程における自然への依存と影響を特定・診断し、ヒートマップにまとめました。
その結果、自然への依存に関して、バリューチェーンの複数の工程に共通して、地下水と地表水の「水」の利用に高く依存している結果となりました。また、植物の栽培や、牛・豚の畜産は依存項目が多く、依存度も高い傾向がみられました。
一方、自然に与える影響に関して、バリューチェーン全体で前記の依存と同様に「水」の使用の影響度が高く、自社事業の製造においても「水」の使用が特に高い要素と認識し、継続して水の使用量削減、水質の維持に努めていきます。
自然への依存・影響とバリューチェーンとの関係
- ENCORE:Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure(自然資本の機会、リスク、開示の探究)。金融機関のネットワークであるNCFA(Natural Capital Finance Alliance、自然資本金融同盟)などが開発した企業の自然への影響や依存度の大きさを金融機関が把握するためのツール。
- 依存:事業活動を行うために依存している生態系サービス(例:農作物の栽培は、水の供給や昆虫などによる受粉などの生態系サービスに依存している。)
- 影響:事業活動が自然に与えるプラスまたはマイナスの影響(例:化学品の製造により、水の使用や温室効果ガスの排出などの影響を自然に与えている。)
Assess リスクと機会の評価
前述の優先地域および依存・影響の結果を踏まえ、気候変動シナリオ(1.5℃・2℃シナリオ/4℃シナリオ)に基づき、日油グループのリスク・機会を特定・評価しました。評価にあたり、影響度と時間軸は以下のとおりとしました。なお、移行リスクにつきましてはワーストシナリオになる温度で評価しています。日油は積極的な環境配慮の推進や環境保全に貢献する製品の開発に注力しています。電気自動車や再生可能エネルギーなどの脱炭素市場への対応により、既存分野での売上減少や一部原材料の使用による評判低下のリスクを伴う可能性がありますが、長期的には以下の機会をもたらします。
● 売上の増加:環境保全への消費者の関心が高まり、環境保全に貢献する製品のニーズが高まり、売上が増加する。
● 評判の向上:積極的な気候変動・排出管理の対策、環境保全に貢献する製品の開発により、長期的には評価・評判は向上し、株価も上昇する。
移行リスク(1.5℃、2℃シナリオ)
要因 | バリュー チェーン |
主要な リスク・機会 |
概要 | 影響度 | 対策 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2023-2050 年 | 2030 年 | 2050 年 | |||||
政策・ 法規制 |
製造 (自社) |
環境法[炭素税、プラスチック税等]規制 による製造コストの 増加、製品の売上の 減少 |
|
ー | 大 | 大 |
|
製造 (自社) |
環境関連訴訟による 損害賠償、操業停止 による売上の減少、 株価の下落 |
|
ー | 中 | 中 |
|
|
政策・ 法規制/ 原材燃料の 高騰 |
栽培・畜産 (上流) |
環境法[メタン排出、 排水規制等]規制 による栽培・生産 コストの増加による 調達コストの増加 |
|
ー | 中 | 中 |
|
加工 (上流) |
環境法[飲料容器税、 包装物税等]規制 による調達コストの 増加、製造中断による 売上の減少 |
|
ー | 小 | 小 |
|
|
輸入 (上流) |
環境法[SOx規制等] 規制による流通コスト の増加 |
|
ー | 小 | 小 |
|
|
原材燃料の高騰 | 栽培・畜産 (上流) |
原材料価格高騰による 調達コストの増加 |
|
ー | 大 | 大 |
|
輸入 (上流) 製造 (自社) |
原油・天然ガスの 価格高騰による エネルギー・輸送 コストの増加 |
|
ー | 中 | 中 |
|
|
ステーク ホルダー からの 評価・評判 |
栽培・畜産 |
一部原材料の使用 による評判の悪化、 株価の下落 |
|
大 | 大 | 大 |
|
(自社) | ESG投資の遅れによる 評価・評判の悪化 |
|
ー | 小 | 小 |
|
|
市場 | 製品 (下流) |
脱炭素市場の転換 による販売先環境変化 |
|
ー | 中 | 中 |
|
物理リスク(4℃シナリオ)
要因 | バリュー チェーン |
主要な リスク・機会 |
概要 | 影響度 | 対策 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2023-2025年 | 2030年 | 2050 年 | |||||
異常気象 | 栽培・畜産、 加工 (上流) |
生態系サービスの 劣化による栽培・ 生産コスト、 調達コストの増加 |
|
大 | 大 | 大 |
|
輸入 (上流) 製造 (自社) |
風水害に伴う 生産拠点や サプライチェーン への被害による売上 の減少 |
|
ー | 大 | 大 |
|
|
製造 (自社) |
生態系サービスの 劣化に伴う 設備コスト増加、 製造中断による 売上の減少 |
|
ー | 小 | 小 |
|
|
(自社) | 高温・熱波による 保管コストの増加 |
|
ー | 中 | 中 |
|
機会
要因 | バリュー チェーン |
主要な リスク・機会 |
概要 | 影響度 | 対策 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2023- 2025年 | 2030 年 | 2050 年 | |||||
資源効率 | 製造 (自社) |
資源効率の上昇 による製造コスト の減少 |
|
ー | 中 | 大 |
|
資金フロー・ 資金調達 |
(自社) | 資金調達方法の 多様化 |
|
ー | 小 | 小 |
|
評判 | (自社) | 評価・評判の向上、 株価の上昇 |
|
ー | 中 | 中 |
|
市場 | 製品 (下流) |
環境保全に貢献する 製品へのニーズ拡大 による売上の増加 |
|
ー | 大 | 大 |
|
- 1.5℃・2℃シナリオ:産業革命以前と比較して、気温上昇を1.5℃や2℃に抑えるために、必要な対策が実施されると想定した脱炭素シナリオ
(国際エネルギー機関(IEA)「2050年ネットゼロエミッションシナリオ(NZE2050)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」など) - 4℃シナリオ:産業革命以前と比較して、気温上昇を4℃に抑えるために、必要な対策が実施されると想定した脱炭素シナリオ
(国際エネルギー機関(IEA)「2050年ネットゼロエミッションシナリオ(NZE2050)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」など) - 影響度:「リスク」影響金額……10億円超(大)、10億円以下・1億円超(中)、1億円以下(小)/
「機会」影響金額……10億円超(大)、10億円以下・1億円超(中)、1億円以下(小)
「機会」市場規模……300億円超(大)、300億円以下・30億円超(中)、30億円以下(小)
財務へのインパクト(抜粋)
日油グループでは、製造工程を中心に蒸気、電気などのエネルギーを消費します。気候変動がもたらす移行リスクとして、炭素税の税率上昇と再エネ賦課金※の単価上昇による財務負担の増加が想定され、影響金額は合わせて33億円程度と試算しています。また、4℃の物理リスクとして500年から数千年に一度の台風により堤防が破壊し、臨海部の工場が浸水した場合の設備被害は77億円と想定し、事業継続計画を整備しています。
環境貢献製品
日油グループでは、気候変動、生物多様性、省資源・リサイクル促進、有害物質・法規制物質の代替に対する技術の研究開発を進め、さまざまな環境貢献製品を生み出しています。環境貢献製品の市場規模は以下のとおりであり、将来的に事業機会となると考えています。
気候変動に関する環境貢献製品[緩和 (1.5℃・2℃シナリオ)]※
電気自動車
【機能材料事業/防錆事業】市場規模:大
EVはガソリン車と比較して電子部品(受動部品)、電動ユニットの増加や、液晶パネルの増加・大型化により、車載電子部品用添加剤、電動ユニット用潤滑剤、防錆剤、液晶カラーフィルター用オーバーコート材の需要増が見込まれます。また、LEDはEVの省電力化に有効なため、LEDヘッドランプ用防曇剤の需要増が見込まれます。さらに、EVは車両の静粛性が向上するため、内装部品の樹脂同士の擦れによるノイズを防止する異音防止剤などの樹脂用添加剤の需要増が見込まれます。

風力発電/太陽光発電
【機能材料事業/防錆事業】市場規模:中
風力発電のブレードに使用されるボルトや太陽光パネルの架台部品用防錆剤、ギアの潤滑に必要な生分解性潤滑油の需要増が見込まれます。また、風力発電や太陽光発電から送電するための超高圧・高圧電線の被覆材として用いられる架橋ポリエチレン用有機過酸化物の需要増が見込まれます。

代替肉
【機能食品事業】市場規模:小
環境負荷を低減する植物由来代替肉の旨味、食感改善に寄与する代替肉用油脂の需要増加が見込まれます。

樹脂サッシ
【機能材料事業】市場規模:小
塩化ビニル樹脂は断熱性の高い樹脂サッシに使用されるため、省エネ住宅の普及に伴い、有機過酸化物の需要増が見込まれます。

気候変動に関する環境貢献製品[適応]※
エアコン/冷蔵庫
【機能材料事業/防錆事業】市場規模:大
気温上昇に伴い、エアコンや冷蔵庫の必要性が途上国を含めグローバルに高まっていて、冷凍機の潤滑油である冷凍機油やエアコン室外機の締結部品用防錆剤、エアコンパテ用ポリブテンの需要増が見込まれます。日油が販売する冷凍機用潤滑基材は代替フロン冷媒用であり、気候変動への適応に貢献します。

診断薬/医薬品原料
【機能材料事業/ライフサイエンス事業】市場規模:大
気候変動の影響で、熱帯性感染症などの病気・疾患の拡大が懸念されるため、感染症対策の消毒液、診断薬用の添加剤のほか、病気・疾患などに対する医薬品の増加による医薬品原料の需要増が見込まれます。

環境情報/防災・減災製品
【化薬事業】市場規模:小
気候変動の進行に伴い、海水温をはじめ、地球全域を調査する必要性が高まる可能性があり、調査のための海洋機器やロケット打ち上げ回数などが増加する可能性があります。また、特定温度に達すると色が変わる温度管理用示温材(ラベルやシールなど)の用途が拡大する可能性があります。さらに、高潮などのリスク増加に伴い、産業用爆薬を用いて、山間部から岩石・土砂を調達する堤防工事が増加する可能性があります。

生物多様性の保全に関する環境貢献製品
土壌・水質汚染防止
【機能材料事業/化薬事業】
建設機器やダムの水門、風力発電などに使用される従来の潤滑油や船尾管軸受油、道路工事に使用されるアスファルト合材付着防止剤は自然界に露出すると環境を汚染するため、日油グループでは生分解性に優れる製品を提供し、土壌・水質汚染防止に貢献しています。
また、『カマグ®』はトンネルや橋梁などのコンクリート部への塩害がないだけでなく、植物への影響が少なく、自然環境に配慮した凍結防止剤です。自動散布装置の『オートカマグ®JET』はソーラー式駆動による100%自然エネルギーでの稼働のため、気候変動の緩和にも貢献します。

気候変動の緩和
【機能材料事業/機能食品事業/防錆事業】
温暖化は間伐や森林火災、海水の酸性化などにより生態系のバランスが崩れ、動植物の絶滅リスク増加につながるとされています。気候変動の緩和に関係するさまざまな製品が生物多様性にも貢献します。
(気候変動に関する環境貢献製品【緩和】を参照)
森林・動物保護
【機能材料事業/化薬事業】
再生紙はごみ処理の適正化のみならず森林資源の保護など地球環境保全にも資するとされています。日油グループは古紙再生に欠かすことのできない古紙再生用薬剤(ピッチコントロール剤や離解促進剤など)で森林保護に貢献しています。
また、『ビバフロスティ®』は冬季の消毒時に動物や人体にやさしい畜産用不凍液です。『ネオドリンク®』は虚弱子牛の体力維持、『ザ・ヨロイ落とし』は短時間でヨロイ(汚れ)を落とせるため、牛のストレス軽減に貢献します。

環境情報
【化薬事業】
海水や大気の観測のほか、人工衛星による植生・沿岸域変化調査、希少生物の行動追跡調査などは生態系保全の基礎データとして利用され、海洋機器やロケット燃料が生物多様性にも貢献します。

リスクマネジメント
日油グループでは、リスク管理委員会で、事業を取り巻くさまざまな経営リスクを網羅的に洗い出し、各リスク項目の影響度・発生可能性について全社的リスクアセスメントを実施し、重点モニタリングリスクを特定しています。TCFD・TNFD提言に基づく情報開示にあたっては、リスク管理委員会とRC委員会から選抜されたメンバーで構成されるワーキンググループを中心に、事業を取り巻くさまざまな経営リスクのうち、気候変動および自然資本関連の影響を及ぼすリスクを特定し、将来において、どの程度、影響度が変化するかについて、リスクアセスメントを実施しています。分析の結果については、CSR委員会に報告し、気候変動・自然資本関連リスクの対策に関わる重要な意思決定などを行っています。

気候変動・自然資本に関するリスクマネジメント体制図
指標・目標
気候変動および自然関連の指標・目標
日油グループでは、レスポンシブル・ケア(RC)活動の目標の一つに温室効果ガスの排出量削減を掲げ、さまざまな省エネルギー施策に取り組んできました。2020年10月の政府による2050年カーボンニュートラル宣言および2021年4月に表明された新たな温室効果ガス削減目標を受け、日油グループにおいても新たな目標を設定して温室効果ガス排出量の削減に取り組むことにしました。
そのほか、日油グループのマテリアリティのKPIやCSR調達において、気候関連および自然関連の目標を設定しており、リスク・機会への対応を推進していきます。
自然関連については、TNFDグローバル中核開示指標および化学セクター中核開示指標として、以下に示す指標データの収集を開始しました。今後、指標データの取得・拡大を進めるとともに、環境負荷の低減を進めていきます。
目標(KPI) | 目標値 | 目標年 | 主な取り組みの内容 | |
---|---|---|---|---|
環境・エネルギー分野への 貢献 (日油グループ) |
環境・エネルギー分野への 戦略製品の売上高 |
15%UP 対2022年度実績 |
2025年 |
|
CSR調達の推進 (日油) |
CSRアンケート調査のカバー率 (購入金額ベース) |
85%以上 | 2025年 |
|
CSR調達の定着化に向けた 対象サプライヤーへの面談 による改善依頼 (会社数ベース) |
85%以上 | 2025年 |
|
|
レジリエンスの向上 (日油グループ) |
BCP教育訓練時間 | のべ 4,000時間以上 |
毎年 |
|
気候変動への対応 | CO₂排出量 (国内グループ) |
40%削減 2013年度比 |
2030年 |
|
カーボンニュートラル (日油グループ) |
達成を目指す | 2050年 | ||
ケミカルセーフティ | 2021年度改正PRTR対象物質 排出量 (国内グループ) |
170トン/年以下 | 毎年 |
|
分類No.※ | 自然の変化の要因 | 指標 | 評価基準項目 | 報告範囲 | 2024年度実績 |
---|---|---|---|---|---|
- | 気候変動 | GHG排出量 | Scope1+2/Scope3 | サステナ報告書:P.140 | |
C1.0 | 陸/淡水/ 海洋利用の 変化 |
総空間フットプリント | 組織の管理下にある総表面積 | 「第102期有価証券報告書」参照 | |
攪乱された総面積 | 日油グループ | 0千㎡ | |||
修復、復元された総面積 | 日油グループ | 0千㎡ | |||
C1.1 | 陸/淡水/海洋の 利用変化の範囲 |
陸/淡水/海洋生態系の利用の変化の範囲 | 日油グループ | 0千㎡ | |
陸/淡水/海洋生態系の保全 または修復の範囲 |
日油グループ | 0千㎡ | |||
持続的に管理されている 陸/淡水/海洋生態系の範囲 |
サステナ報告書:P.148 | ||||
C2.0 | 汚染・ 汚染除去 |
土壌に放出された汚染物質の種類別総量 | PRTR法対象物質 | サステナ報告書:P.153 | |
C2.1 | 廃水放出 | 排水量 | サステナ報告書:P.148-149,153 | ||
BOD、COD、浮遊物質、 PRTR法対象物質 |
|||||
排水温度 |
日油グループ (規制対象箇所: 千鳥工場、大師工場) |
25~32度 川崎市の条例に準拠 |
|||
C2.2 | 廃棄物の発生と処理 | 廃棄物発生量 (総量) |
サステナ報告書:P.158 | ||
廃棄物発生量 (有害廃棄物) |
日油グループ | 7,395トン | |||
廃棄物発生量 (非有害廃棄物) |
日油グループ | 141,248トン | |||
外部処理量最終埋立処分量 | サステナ報告書:P.158,159 | ||||
リサイクル量 | サステナ報告書:P.158,159 | ||||
C2.3 | プラスチック汚染 | プラスチック使用量 | 日油 | 2,648トン | |
C2.4 | 温室効果ガス(GHG)以外の 大気汚染物質総量 |
NOx、SOx、ばいじん VOC 有害大気汚染物質 PRTR法対象物質 |
サステナ報告書:P.151-153,156 | ||
C3.0 | 資源の利用・ 補充 |
水不足拠点の取水量 | 水不足拠点の取水量 | NOF METAL COATINGS EUROPE N.V. PT.NOF MAS CHEMICAL INDUSTRIES |
453千㎥ (日油グループのうち 5.7%) |
水不足拠点の消費量 | 152千㎥ (日油グループのうち 8.1%) |
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- | - | 毒性レベル別使用農薬からの 収入 |
農薬からの収入なし | - | |
- | - | PFAS生産量の変化率 | PFASの生産・使用なし | - | |
- | - | コンプライアンス違反 | 環境関連法令の違反 | サステナ報告書:P.164 |