人材の活躍と働きやすい職場づくり
方針(基本的な考え方)
変化が激しく、不確実性が増す事業環境下において、さまざまな社会課題に向き合い、革新的なテクノロジーの進歩を敏感に察知し、新たな価値の創造に挑んでいくことがますます求められるなか、人材の成長が経営の根幹をなすとの考えのもと、人的資本経営の視点も交え、人材活躍の3つの柱「人材育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「エンゲージメント」に取り組みます。
一人ひとりが価値創造へ挑む
従業員自らが、3つの価値観「挑戦」「公正」「調和」を体現し行動する組織文化を、さらに強固にしていくため、全従業員に対して、“自分事”として3つの価値観の理解を深めてもらうための人材育成の取り組みを開始しました。一人ひとりが事業を推進する当事者であり、それぞれの業務の責任者であるとの意識を持つことによって、変化が激しく不確実性が増す事業環境下、新たな価値創造に挑んでいく“個”としての成長と、人材の集合体である“組織”としての成長を遂げていきたいと考えています。「人材の成長」が経営の根幹をなすとの考えのもと、人的資本経営の視点を交え、多様性の拡充やエンゲージメントの向上に取り組み、一人ひとりの成長意欲に対する惜しみない支援を継続していきたいと考えています。
執行役員 人事・総務部長 前田晃寿
人材活躍の3つの柱
人材育成
自律型人材の育成、DX人材の育成に、キャリアデザイン構築支援を加えた人材育成施策を推進します。また、持続的な事業成長に向けて、従業員のリーダーシップ開発に取り組み、「挑戦」を評価する風土づくりの推進に努めます。
ダイバーシティ&インクルージョン
性別や年齢、国籍や障がいの有無などにかかわらず、多様な人材の採用を継続します。また、女性がより活躍できる風土をつくるため、女性が働きやすい制度の充実を図ります。
エンゲージメント
従業員一人ひとりが経営理念や価値観を理解して、活き活きと職務を遂行することができる仕組み、制度および職場づくりを継続的に進めます。また、エンゲージメント調査を定期的に実施し、働きがいの向上に努めます。
ガバナンス
CSR委員会
全取締役が出席するCSR委員会では、人的資本に関するマテリアリティ(重要課題)を特定・審議し、取締役会に報告しています。
CSR委員会は、各マテリアリティのKPIや目標値を設定して、その進捗状況の審議を行います。また、次事業年度に向けて、KPIや目標値などを議論し、活動レベルの継続的な向上に努めています。
政策会議
取締役兼執行役員と役付執行役員が出席する政策会議では、多様性を受容し尊重することがイノベーションの創出を促すという考えに基づき多様な人材の確保を進めるため、採用予定人数、配置や多様性の確保などにつき審議および採用状況の評価を行い、人材確保の活動を進めています。加えて、従業員一人ひとりが活き活きと職務を遂行するため、働きがいの向上や働きやすい職場づくりを目指し、エンゲージメント調査を実施し、調査結果の評価と課題抽出を行い、取り組みの実効性を高めるよう努めています。
人材会議
取締役兼執行役員と役付執行役員が出席する人材会議では、持続的な事業成長を支える人材の育成施策を着実に推進するため、全社の人材育成計画に関する審議および実施内容の評価を行うほか、部長クラスの人事評価の審議や定期面談、昇格候補者との面接、経営幹部候補人材からの経営施策等に関する提言報告の場を設けており、人材会議が部長クラスの人材特性把握と人材育成施策に関与し、後継人材を含む育成のPDCAを回す体制を整えています。
指名委員会
社外取締役が過半数を占める指名委員会では、後継人材育成に関する評価と議論を行い、取締役会へフィードバックをしています。
-
多様な人材確保、人材育成に関する
ガナンス体制
指標・目標
新しい価値の創造に挑戦する多彩な人材を輩出します
人材育成
変化が激しく不確実性が増す事業環境下、NOF VISION 2030で描く2030年度のありたい姿に到達する原動力として、高い当事者意識を持ち課題解決に向けた仕事をやりきる人材の集合体へと成長を遂げていきたいと考えています。
そのための人的資本投資として、階層別・課題別研修の充実や自己啓発支援の拡充を図ることに加え、新しい知識、さまざまな知見やスキルを学ぶ機会を提供し、一人ひとりの挑戦を後押しする環境を整えていきます。
【2023年度の主な取り組み】
・従業員自らが主体的に中期的なキャリアデザインを考える「キャリア研修」(99人)
・高い当事者意識を持って日油「価値観」の理解を深めてもらう「自律型人材育成」(1,861人)
・次世代経営人材の育成を目的とする「日油経営塾」(15人)
・DXを推進する選抜人材への「DX人材育成」の取り組み(75人)
・さまざまな分野の経営者や文化人、研究者の思考に触れる機会の提供(436人)
【戦略投資】
1)自律型人材の成長促進
・自律型人材の育成強化
日油「価値観」を体現する高い当事者意識の軸を有する人材を育成するため、全社全員を対
象とした研修を計画的に実施する。
・キャリアデザイン構築の支援
従業員が主体的に中長期的な目標を描き、効果的・効率的に能力開発できるよう、キャリア
デザイン構築の支援を検討する。
2)DX人材育成の推進
選抜人材を対象にDX研修を計画的に実施する。
3)グローバル人材育成の推進
海外事業で活躍できる人材の育成施策などを計画的に実施する。
研修費用の推移(日油)
2021年度:74百万円
2022年度:91百万円
2023年度:159百万円
2024年度(見通し):190百万円
2025年度(見通し):230百万円(対2022年度91百万円の2.5倍以上)
ダイバーシティ&インクルージョン
持続的な事業成長の実現には、多様な価値観をもつ従業員の活力を最大限引き出すことができる環境や風土を整えていくことが大切であり、多様性を受容し尊重することによって、イノベーションを起こし続けることができると考えています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で、女性従業員の活躍は大きな課題です。日油では女性総合職比率を高めるために、9年間にわたり新卒総合職採用者の30%以上を女性とする取り組みを継続しています。2015年度末時点で総合職の10%に満たなかった女性総合職は、2023年度末時点では25%に拡大。将来の幹部候補性として管理職に昇格し、さらなる活躍が期待される女性総合職の層の厚みが増してきています。今後も継続してこの取り組みを進め、多様な人材が活躍できる環境づくりや女性管理職比率の向上に中期的な視点で取り組んでいきます。
1)新卒総合職女性の採用比率(日油)
実績:42.9%(2021年度)、36.1%(2022年度)、32.7%(2023年度)
目標:30%以上(毎年)
施策:・入社後の働くイメージやキャリアの構築、仕事と子育ての両立に関する理解を深めて
もらうことを目的に、採用ホームページにて若手社員や子育て社員の声を掲載
・キャリア構築や多様性の理解促進などを目的に、ダイバーシティ研修を女性従業員と
その上司(部長・課長)を対象に実施
2)女性管理職比率(日油)
実績:4.8%(2021年度)、4.7%(2022年度)、5.2%(2023年度)
目標:2021年度比3倍以上(2030年)
施策:・女性総合職の計画的な育成による、管理職登用の促進
・出産や育児または配偶者の転勤などのさまざまな理由により、止む無く退職した場合
でも、日油への再就職を推進するためのジョブ・リターン制度を構築
3)障がい者雇用率(日油)
実績:2.43%(2021年度)、2.46%(2022年度)、2.54%(2023年度)
目標:3.0%以上(2030年)
施策:・活き活きと働ける職場づくり(職務の明確化)の推進
4)男女賃金差異比率※1(日油)
実績:正社員:70.6%(2022年度)、72.6%(2023年度)
非正規:84.9%(2022年度)、84.5%(2023年度)
全体 :70.7%(2022年度)、72.0%(2023年度)
目標:正社員:75%以上(2030年)
施策:・仕事と出産・育児の両立を支援する制度の拡充
・24時間連続操業の製造職場で女性従業員が勤務しやすいよう、
休憩室を含む職場環境を整備
・女性管理職の候補者拡充
※1 男女賃金差異比率(%)=女性平均年収/男性平均年収×100
5)男性育児休業取得率(日油)
実績:50.0%(2021年度)、95.2%(2022年度)、97.4%(2023年度)
目標:100%(2030年)
施策:・男性従業員が育児休業を取得できるよう取得支援策を実施
・代替要員確保のルールを明確化
6)経営職・総合職経験者採用比率※2(日油)
実績:30.0%(2021年度)、29.4%(2022年度)、38.8%(2023年度)
目標:25%以上(毎年)
施策:・他社での業務経験を活かせる人材や優秀な外部人材の採用を推進
※2 経験者採用比率(%)=(4月1日~3月31日 経験者採用入社者)
/(4月1日~3月31日 総合職新卒、経験者採用入社者)×100
エンゲージメント
従業員一人ひとりが経営理念や価値観を理解して、高い当事者意識を持ち活き活きと職務を遂行することが、持続的な事業成長を実現する原動力になると考えています。インナーブランディング強化の視点を交え、「10年先の姿を語り実現していく人材を育て、増やしていく」ことをテーマに、エンゲージメント向上に注力しています。そのための取り組みとして、日油の価値観に基づく自律型人材の育成や、ダイバーシティ&インクルージョン、ワーク・ライフ・バランス、健康、労働安全衛生、労使関係といったさまざまな視点から働きやすい職場づくりに取り組んでいます。従業員のエンゲージメントと過去の取り組み結果を把握するために、2022年度より従業員エンゲージメントサーベイを実施しています。仕事・職務に関するエンゲージメント(創意工夫・関係構築・意味付け)と、会社・組織に関するエンゲージメント(仕事の中身・人間関係・組織制度)をもとに、総合エンゲージメントスコアを測定。これらを分析・評価し、次の施策を実施・計画しています。
【エンゲージメント向上のための取り組み】
・全社員等を対象に新たに定めた価値観の共有と価値観に基づく自律的な行動に関する理解を
促進するためのワークショップの開催
・キャリア構築支援の取り組み(キャリア研修の実施、キャリア相談窓口の新設)
・通信教育の充実による自己啓発支援
・スポーツジム利用による健康づくりへの支援
・禁煙対策の継続的取り組み(2021年度から)
・積立保存休暇制度の拡充
(積立の仕組みや日数の見直し、使用事由に妊娠中の体調不良時の追加など)
・リフレッシュ休暇(勤続休暇)の対象勤続年数の拡充
総合エンゲージメントスコア(日油)
実績:49.5(2022年)、49.5(2023年)
目標:50.0以上(2025年度)
|測定項目
「仕事・職務に関するエンゲージメント状態」
創意工夫、関係構築、意味付け
「会社・組織に関するエンゲージメント状態」
仕事の中身、人間関係、組織制度
「その他の測定項目」
経営理念の理解度、人事評価制度の運営評価、在宅勤務制度の評価、
コンプライアンスの取り組み評価
リスクと機会
リスクについては、リスク管理委員会が縄羅的なアセスメントを実施し、リスクヘの対策を進めています。
|人的資本におけるリスクと機会テーマ | リスク概要 | 機会 |
---|---|---|
人材育成の遅滞 | ● 人材育成計画の遂行遅延、不十分な能力開発によって、事業成長を担う中核人材の育成が遅れ、持続的な事業成長に支障をきたす可能性がある | ● 人事育成の遅滞を招くことのないよう定期的にPDCAを回す仕組みを整えており、取締役兼執行役員と役付執行役員が出席する人材会議が、全社の人材育成施策計画に関する審議および実施内容の評価を行い、持続的な事業成長を支える人材の育成施策の着実な実施に努めている ● 人材育成に係る研修費用を指標とし目標を定め、全取締役が出席するCSR委員会へ進捗状況・結果を報告し、対応方針等を議論し人材育成施策の継続的な向上に努めている |
人手不足 | ● 労働人口・若年層の減少、好景気による求人拡大によって、必要な従業員確保が遅れ、事業計画が遅延する可能性がある | ● 新卒採用では、応募者の希望とのミスマッチを防ぐ取り組みや工場見学会等の事業理解の促進を進め、経験者採用では、採用情報の公開先の拡充や自社ホームページでの情報の充実化によって、事業計画に沿い高いスキルを保有する人材確保の可能性を高めるよう努めている ● 退職者の再入社を実現しやすくする制度(ジョブ・リターン制度)を整備し、経験値のある人材を確保する機会を設けている ● 新卒総合職女性の採用比率や経営職・総合職経験者採用比率の目標を定め、全取締役が出席するCSR委員会へ進捗状況・結果を報告し、対応方針等を議論し人材確保に関する取り組みの継続的な改善に努めている |
離職率上昇 | ● 会社への不満や家族介護等の事情を理由に、離職する従業員が増加することによって、事業推進や業務遂行に支障をきたす可能性がある | ● 年に1度、上司と部下がキャリアに関する対話を行う機会(自己申告制度)を設け、個々の希望等の把握に努め、キャリア構築の支援や働きやすい職場づくりの推進を進めるとともに、介護や育児等と仕事の両立を支援する制度の充実化をはかっている ● 新たにキャリア相談窓口を設置し、専門家のアドバイスを得られる機会を提供し、主体的なキャリア構築と人材の成長促進を支援し、高い意欲をもち仕事を行う人材の創出に努めている |
人的資本に関するリスクマネジメント体制
人的資本に関するリスク管理について、リスク管理委員会を設置し、CSR委員会を通して取締役会に報告し監督を受ける体制を整備しています。
CSR委員会
全取締役が出席するCSR委員会では、人的資本に関するリスクアセスメントの結果を監督し、取締役会へ報告しています。
リスク管理委員会
リスク所管部門等から構成するリスク管理委員会では、事業を取り巻くさまざまな経営リスクを網羅的に洗い出し、各リスク項目の影響度・発生可能性について全社的リスクアセスメントを実施し、優先的に対応すべきリスクを特定しています。事業を取り巻くさまざまな経営リスクのうち、人事・労務分野に関するリスクに関して、将来において、どの程度、影響度が変化するかについて、リスクアセスメントを実施し、分析の結果については、CSR委員会に報告しリスク対策の評価を行っています。
人的資本に関する取り組み
日油グループでは、人的資本に関するさまざまな取り組みを進めています。