人権
方針(基本的な考え方)
「バイオから宇宙まで、化学の力で新しい価値を創造する企業グループとして、人と社会に貢献します」という経営理念のもと、「CSR基本方針」「倫理行動規範」で、「人権の尊重」を明文化し、人権尊重の取り組みを推進しています。日油グループは、グローバルに事業を展開するにあたり「国際人権章典」、ILO(国際労働機関)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、「グローバル・コンパクトの10原則」および日本政府の「「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)」などの国際規範を支持、尊重し、企業活動全体において、「児童労働・強制労働・人身取引の禁止」「結社の自由・団体交渉権の行使」を含む、人権を尊重する責任を果たすため、2021年度に、日油グループのすべての役員および従業員に適用される「日油グループ人権方針」を制定しました。ここでは、先に示した国際規範のみならず、事業活動を行う各国・地域の文化、慣習、歴史や労働関連法令も尊重するものです。
また、事業活動において想定される人権リスクに対する取り組みを検討・実施しています。具体的な活動の一例として、自社従業員向けエンゲージメントサーベイの実施による社内の人権遵守状況の確認や、特定された課題に対する是正措置の実施、サプライチェーン全般にわたり、国際的に認められた人権の尊重状況に関する調査として、お取引先のサプライヤーの皆様へのCSRアンケート調査の実施などが挙げられます。
さらに、本年度においては、2023年4月に改定された「新経営理念体系」の価値観の浸透に関し、全従業員を対象とした教育プログラムの一環として、「当社グループの価値観と人権・コンプライアンス」に関する内容の教育を実施しました。また、2024年4月より施行となった「障害者差別解消法」の改正法の対応も社内展開しています。詳細は以下をご覧ください。今後も、従業員教育の充実やステークホルダーとの対話を進めるなど、人権デュー・ディリジェンスの取り組みをより深化させ、人権リスクの低減に取り組んでいきます。
人権方針
日油グループ人権方針
1.理念と目的
日油グループは、人権はすべての人びとの幸福と豊かな生活を追求するうえで不可欠であることを深く認識し、「国際人権章典」、ILOの「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、および日本政府の「「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)」などに基づき、国または地域における法と規制の遵守に留まらず、人権尊重の施策に取り組む姿勢を明確にします。
2.適用範囲
本方針は、日油グループのすべての役員および従業員に適用されます。また、日油グループは、ビジネスパートナーおよびサプライヤーに対して、本方針を支持し、同様の取り組みへの参画を期待して継続的に働きかけ、協働して人権尊重の取り組みを推進します。
3.人権尊重の責任
日油グループは、自らの事業活動において影響を受ける人びとの人権を侵害しないこと、また自らの事業活動において人権への負の影響が生じた場合は是正に向けて適切に対処することにより、人権尊重の責任を果たします。ビジネスパートナーやサプライヤー、製品供給において人権への負の影響が引き起こされている場合には、適切な対応をとるよう求めます。
4.人権デュー・ディリジェンス
日油グループは、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、予防的に調査・把握を行い、適切な手段を通じて是正し、人権への負の影響を防止または軽減することに継続的に取り組みます。
5.是正・救済
日油グループは、人権に対する負の影響を引き起こした、または負の影響を助長したことが明らかになった場合、適切な手続きを通じてその是正に取り組みます。
6.対話・協議
日油グループは、人権に対する負の影響が生じている場合、またはそのリスクがある場合には、関連するステークホルダーとの対話と協議を行います。
7.教育
日油グループは、本方針に関する正しい理解が社内外に浸透し効果的に実行されるよう、適切な教育を継続的に行います。
8.情報開示
日油グループは、人権尊重に関する取り組み状況について開示します。
自社・グループ従業員の人権の尊重
職場の労働安全衛生を守る取り組み
日油グループは、各事業所の協力会社の方々も含めて、グループ一体となって労働災害の撲滅を目指しています。日油グループに関係する労働者全員が、安全に安心して働ける職場をつくる決意を明確にし、理想を実現するために、2006年4月に労働安全衛生方針を定めました。主な取り組みは以下のとおりです。労働災害の発生状況はサステナビリティレポート186ページをご覧ください。
(1)OSHMS※(労働安全衛生マネジメントシステム) の構築
日油グループでは、労働安全衛生方針を掲げ、OSHMSの構築に取り組んでいます。国際労働機関・厚生労働省などのガイドラインを参考にしてシステムを構築し、活動を推進しています。2008年度から日油グループのすべての事業所でスタートしたリスクアセスメントは、現在では国内グループ会社にも展開しています。
(2)各種研修・訓練の実施
日油グループでは、フォークリフト操作や危険物・化学物質の取り扱い、職場における転倒防止、熱中症予防などのさまざまな研修、および防災訓練やBCP訓練を行っています。
※ Occupational Safety and Health Management Systemの略
事業者が継続的に安全衛生の潜在的リスクの低減を実施するための組織、責任、手順、プロセスおよび経営資源について定め
た管理システム
ダイバーシティ推進の取り組み
日油グループでは、女性の活躍推進を目的としてさまざまな研修を実施しています。これまで、女性従業員を部下に持つ管理職を対象とした多様性推進やジェンダーバイアスに関する研修、女性従業員を対象とした多様性推進やリーダーシップ開発に関する研修を実施しました。
労働時間管理
日油グループでは、業務の効率化や生産性の向上により労働時間を削減し、仕事以外の生活の充実を図ることを目的に、適正な労務管理の徹底を図るとともに、所定時刻以降の就業制限や勤務間インターバル制度の導入など、労働時間の削減に向けた取り組みを進めています。
内部通報窓口の設置
日油グループは、コンプライアンスに違反した行為または違反する恐れのある行為が存在することを知った場合の内部通報・相談窓口として、日油グループの事業拠点が存在する諸外国において、日本語・英語・中国語(簡体字)・韓国語・インドネシア語・ポルトガル語に対応する窓口を外部の第三者機関に設置しています。
2023年度は、ハラスメントを主として15件の通報を受け付けました。いずれの通報に対しても迅速かつ通報者探索のないよう、慎重に事実関係の調査を行い、必要な是正措置、再発防止策を講じました。例えば、ハラスメント関連の通報においては、被通報者への指導や懲戒処分などを行いました。
エンゲージメントサーベイの実施
日油グループは、2022年度から自社従業員向けに実施しているエンゲージメントサーベイにて、社内でのハラスメント発生状況やプライバシーの尊重、女性や外国人に対する処遇・評価、職場の労働安全衛生、通報窓口や不利益取扱の認識を調査し、2023年度は従業員1,785名から回答を得ました。
調査結果の一部は下記のとおりです。通報窓口を知っていると回答した従業員は、回答者全体の90.4%に上り、通報窓口の認識率が高いことがわかりました。一方、「差別やハラスメントは許さないという意識が職場内に定着してない」と回答した従業員が回答者全体の約2割に上りました。
上記課題に対する対応として、2024年1~3月にかけて、日油の価値観研修のプログラム内で「価値観と人権・コンプライアンス」に関する項目を設け、ハラスメント防止について全国の拠点で展開しました。
選択肢 |
職場内の違法・不正行為につ いて通報・相談できる窓口が あることを知っていますか。 |
---|---|
窓口の連絡先も含めて知っている | 50.1% |
窓口があることは知っているが、連絡先がわからない | 40.3% |
知らない | 9.6% |
選択肢 |
差別やハラスメントは許さないという意識が職場内に定着していますか。 |
---|---|
十分に定着している | 33.3% |
やや定着している | 45.6% |
あまり定着していない | 17.0% |
ほとんど定着していない | 4.1% |
取引を通じたステークホルダーの人権の尊重
CSR調達方針およびCSR調達ガイドラインの策定、購買取引基本契約書へのCSR条項の盛り込み
日油グループは、安定かつ持続可能な調達のため「CSR調達方針」を定めています。また、日油グループならびにお取引先のサプライヤーの皆さまに取り組んでいただきたいことをまとめた「CSR調達ガイドライン」を作成しています。
さらに、取引先の皆さまと購買取引基本契約書を新たに締結する際は、日油グループのCSR調達方針とCSR調達ガイドラインの遵守に努める旨の条項を追加することにしました。契約済みの購買取引基本契約書に関しても順次改定を進めていきます。
CSRアンケート調査の実施
調達部門では、主要お取引先のサプライヤーの皆さまに日油グループのCSR調達方針をご説明するとともに、調査の客観性を向上するため、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)が作成したCSR調達 セルフ・アセスメント質問表を使用して主要取引先の皆さまのCSR活動状況に関するアンケートを取っています。
直近では2020年度から2021年度にかけて主要取引先の皆さまにアンケートを行い、購入金額ベースのカバー率は84%となりました。人権や労働に関する設問および各項目の平均点は以下のとおりです。取り組みが不十分だと思われる取引先に対しては2022年度に面談を実施し、改善を働きかけています。
カテゴリ | 設問 | 平均得点 (5点満点) |
---|---|---|
Ⅰ.CSRに関わるコーポレートガバナンス | 内部通報制度の構築 | 4.27 |
Ⅱ.人権 | 1.人権の尊重と差別の禁止 | 4.12 |
2.人権侵害の加担(助長)の回避 | 3.99 | |
3.先住民の生活および地域社会の尊重 | 3.51 | |
Ⅲ.労働 | 1.雇用における差別の禁止 | 4.40 |
2.人材育成やキャリアアップ等に関する従業員への平等な機会提供 | 4.49 | |
3.非人道的な扱いの禁止 | 4.56 | |
4.適正な賃金の支払い | 4.79 | |
5.労働時間、休暇・有給休暇等の公正な適用 | 4.85 | |
6.強制労働の禁止 | 4.66 | |
7.児童労働の禁止 | 4.64 | |
8.操業する国や地域の宗教的な伝統や慣習の尊重 | 4.19 | |
9.結社の自由と団体交渉の権利の認識と尊重 | 4.31 | |
10.従業員の安全衛生、健康についての適切な管理 | 4.85 |
持続可能なパーム油の調達
パーム油が生産されているアブラヤシ農園では以前より人権・労働問題の存在が指摘されています。日油グループは2012年から「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」に加盟し、2014年にサプライチェーン認証を取得、2019年に日本で発足した「持続可能なパーム油ネットワーク(JaSPON)」にも発足メンバーとして参加し、持続可能なパーム油の調達活動に取り組んでいます。
責任ある鉱物調達への対応
人権などに影響を及ぼす可能性のある紛争鉱物(3TG※1)については、責任ある鉱物イニシアチブ(RMI※2)の紛争鉱物調査における統一フォーマット(CMRT※3)を使用して主要取引先の皆さまにアンケート調査を実施し対応しています。さらに2023年度からは対象鉱物がコバルト・天然マイカの統一フォーマット(EMRT※4)を使用して主要取引先の皆さまにアンケート調査を開始しました。
※1 コンゴ民主共和国とその周辺国由来のスズ・タンタル・タングステン・金の4鉱物のこと
※2 Responsible Minerals Initiativeの略
※3 Conflict Minerals Reporting Templateの略
※4 Extended Mineral Reporting Templateの略
社外通報窓口の設置
日油グループは、コンプライアンスは会社を支える基本と認識しており、法令や倫理行動規範に反するような事象や人権侵害事案を、未然に防止あるいは早期是正することにより深刻化、長期化させないことが重要と考え、お取引さまをはじめとした社外からの通報窓口を設置しています。
お客さまの人権の尊重
上述の社外通報窓口はお取引先さまだけでなく、日油のお客さまからの通報も受け付けています。なお、これまでのところ、本窓口を通じた通報は、受領していません。
人権におけるリスクと機会
重要 リスク |
リスク管理 | 機会 | 主な取り組み |
---|---|---|---|
ハラスメント | ハラスメントに関する訴訟提起による社会的信用の失墜、企業価値の棄損 | ・経営理念・価値観、倫理行動規範の浸透によるハラスメントの解消 ・社員のエンゲージメント、社会的な企業価値認知の向上 |
<共通> ・倫理行動規範の改定 2023年度実績:改定案の策定 2024年度計画: グループ会社(海外を含む)に展開 ・動画教材によるコンプライアンス教育の展開 2023年度実績: 動画素材選定・入手、公開用プラットフォ ーム検討 2024年度計画: 社内公開、活用の推進と状況確認 ・経営理念・価値観とコンプライアンス教育の展開 2023年度実績:全従業員対象に実施 2024年度計画:階層別教育に組み入れて実施 ・社内報を活用した継続的啓蒙活動 2023年度実績: バワーハラスメント関連記事の集中掲載 2024年度実績: 社内実態、社会情勢に合わせたテーマ選定 <ハラスメント> ・通報対応の手引きの作成 2023年度実績: 社内実態を反映した手引きを作成 2024年度計画: 管理職対象の説明会実施 <人権> ・人権教育の実施 2023年度実績:教育内容、対象者選定 2024年度計画: 経営層に対する人権教育の実施 ・エンゲージメントサーベイの継続実施 2023年度実績: 自由意見を分類・集約し社内開示検討 2024年度計画: 改善施策の実施と自由意見による評価把握 |
人権侵害 | サプライチェーン上、社内外での人権問題の顕在化によるレピュテーション低下、取引停止等の経済的損失 | ・ビジネスパートナーとの連携強化、社会的信用度の向上 ・社員のエンゲージメント向上 |
優先取組みリスク(ハラスメント・人権侵害)への対応
日油グループでは、事業を取り巻く経営リスクを網羅的に洗い出し、レジリエンスを高めるべき項目を「優先取組みリスク」に選定しています。そのひとつである「ハラスメント・人権侵害」では、下記4つのテーマに注力した対策を実施しています。
2023年度の活動実績 | 2024年度の活動計画 | ||
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倫理行動規範の改定 | 企業のコンプライアンスを取り巻く社会情勢や意識の変化をふまえ、新たな経営理念と3つの価値観を基準とした改正案を作成 | 内容を確定し、国内グループ向けに社内報の特別号で周知。ホームページでは日本語版・英語版を開示するほか、「倫理行動規範=価値観」の周知として社内研修の企画も検討 | |
ハラスメント対応の策定 | ハラスメント案件の初動対応や管理職の心構え、調査による被害者への二次被害の発生防止を中心に、留意点をまとめた「内部通報案件対応の手引き」を作成 | ハラスメント防止・対処の要である管理職を対象に説明会を開催。意識改善を図り、「自分ごと」としての積極的な関与を推進 | |
人権・コンプライアンス意識の強化 | コンプライアンス教材動画の導入 | ハラスメントの防止や人権意識の啓発をテーマとした教材動画を購入。また、社内公開用の動画プラットフォームの導入を検討 | 全従業員が容易にアクセスできる環境を整備し、教材動画を社内へ公開。啓発月間・週間には動画の閲覧テーマをアナウンスすることで、個人やグループの積極的な活用を促す |
価値観・人権・コンプライアンス教育の実施 | 価値観・自律型人材育成研修のプログラムとして、「日油グループの価値観と人権・コンプライアンス」における独自コンテンツを作成し、社内講義を実施 | 法務部と人事・総務部が協働し、ハラスメントを中心としたコンプライアンス教育や、下請法など特定の法令に関する教育を階層別研修内で実施 | |
エンゲージメントサーベイ(従業員に対する人権DD)の実施 | エンゲージメントサーベイで挙げられた自由意見を分類・集計し、制度の改善点や人権リスク解決に向けた情報を抽出。また、これらの社内開示を検討 | 同様のアンケートを実施し、施策の浸透や改善に対する動向を把握。また結果概要を社内報に掲載することで、エンゲージメントサーベイが各施策の根拠となる旨を発信 |