ケミカルセーフティ
方針(基本的な考え方)
日油グループでは、関連法令の遵守と適応、化学物質の管理と取り扱い、環境負荷の管理と低減、および顧客の安全をケミカルセーフティとして、レスポンシブル・ケア(RC)活動の中で展開しています。各国・各地域で定められた関連法規を遵守し、化学物質のリスク情報の公開や業界団体への参加、規制動向の情報収集により、環境法令等への適応を図っています。
化学物質の管理では、新規化学物質を含めた安全リスクの評価や、透明性と可視化の向上のための管理システムの機能拡充にも取り組んでいます。また、従業員の安全の確保のため、化学物質リスクアセスメントに基づく適切な保護具の着用や作業環境測定を実施しています。環境負荷の管理と低減にも積極的に取り組んでおり、PRTR法対象物質の管理や大気への排出量削減、フロン類の法律に基づいた管理を行っています。
また、顧客の安全の確保のため、安全リスク評価で得られた情報を製品のラベルや安全データシート(SDS)に反映して情報提供するとともに、輸送時の安全のため、イエローカードの携帯を徹底しています。PDCAサイクルを活かしたRC活動を通じて、毎年ケミカルセーフティのレベル向上に取り組んでいます。
マネジメントアプローチ
日油グループでは、現在、そして将来にわたってお客さまのニーズに応えるため、リスクベースでの適正な化学品管理を推進するとともに、新製品を含むすべての製品についての製品安全リスク評価を実施しています。
いま、多くの国・地域で化学品管理に関わる法規制の制定や改正の動きが活発化しています。日油は国内外のグループ会社と連携して、以下の事項に対応するため、法規制動向の情報収集力を強化するとともに、化学物質総合管理システムを用いて機能充実を図り、コンプライアンスを徹底しています。
● ライフサイクルの全段階および意図された用途に関連する各製品の危険性、リスクおよび影響を
包括的に理解しています。
● 世界的な一貫性を確保しつつ、製品情報に関する各地域の要件に準拠するよう、随時、情報の
質と量をアップデートしています。
● 全ライフサイクルを通じて製品が利用可能であることを保証するために、必要かつ要求される
すべての製品安全情報の記録を保管しています。
● 標準化された安全データシート(SDS)を、初回納品時および現地の要求に応じて、顧客に提供し
ています。この重要な情報提供の仕組みは一貫して維持され、すべての製品について、各国の規
制を遵守し、お客さまがご要望される言語で、全世界のすべての顧客に配布しています。
日油グループの取り組み
日油グループは、製品の化学的性質、危険性、人や環境への影響を正しく理解し、製品の取り扱いに関連するリスクを管理することが、将来において、安全で競争力のある製品ポートフォリオを市場に提供するための基本と位置付けています。日油グループは、自社製品に関連する危険有害性情報をお客さまや従業員が容易に入手できるように、SDSを提供する仕組みの確実な運用に努めるとともに、最新情報への更新を継続しています。
日油グループは現在、約5千を超える製品を世界82か国の市場に送り出し、これらの市場に向けてSDSを提供しています。また、法改正に対応して改定する責任を負い、製品に関する十分な理解と安全な使用方法および取り扱い方法を確保するため、お客さまに適切な情報と技術的支援を提供しています。現在、製品情報を管理するためのシステムを導入し、法規制の進展にともない、関連するリスクを記録・評価するため、製品の使用条件についてより多くの情報を収集し、SDSに反映させています。また、日油は、POPs条約、RoHS指令などに指定される管理すべき化学物質を一覧化し、
1)すべての取り扱いを禁止する化学物質
2)代替品の検討・取扱量の削減に努める化学物質
3)適切な管理のもとで取り扱う化学物質
の3つにランクして管理の徹底、数量の削減を進め、欧州連合(EU)のREACH(化学物質の登録、評価、認可および制限)、英国のU K-REACH 、韓国のK-REACH、米国のTSCA(有害物質規制法)など、関連する地域および国の化学物質規制を遵守しています。日油では、EU-REACHの登録済件数は43件(2023年度末現在)となっています。
EUのREACH制度の施行以降、高懸念物質(SVHC)を含有する対象製品はありません。
また、日本国内では、水質汚濁に影響する鉛を含んだ雷管等火工品の鉛フリー化を推進しています。
サプライチェーンにおける取り組み
【製品開発】
最終製品においてリサイクル化や省エネ化に貢献するもの、生分解性を持ち有害物質を含まない環境対応型製品の開発を進めています。また、新製品の設計審査や商業生産移行段階でのアセスメントにおいて、取り扱うすべての化学物質に対して危険・有害性に関するスクリーニングを実施し、環境に影響の少ない製品開発を行っています。
【調達】原材料の調達
使用する原材料は「品質・コスト・納期」に「環境・健康への影響」を加えたCSR調達を行っています。危険性や有害性に関する管理物質一覧は、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)、RoHS指令、REACH規制、日本の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」「労働安全衛生法(安衛法)」「毒物及び劇物取締法」などをもとに決定し、年に一度見直しています。
【製造】
新製品が設計どおりに製造されているかを検証し、商業生産に入ります。環境処理設備の安定稼働や化学物質の回収条件の最適化により、環境負荷の低減を図っています。2016年に義務化した「化学物質リスクアセスメント」は、施行に先んじて2008年より取り組みを開始。化学物質のリスク評価と見直しを随時行い、従業員の安全衛生に寄与しています。
【流通・使用】化学物質の管理と情報提供
2020年度よりSDS作成支援システムを構築、導入し、全社のSDSを一元管理しています。
【廃棄・リサイクル】
ゼロエミッション率※を0.10%以下とすることを目標に活動しています。不要な物質は分別し、有用なものはリサイクルプロセスに乗せるかサーマルリサイクルを行っています。また、廃プラスチックの分別回収やリサイクルを推進し、再資源化に取り組んでいます。廃棄物の処理先は、行政の優良認定に加え、自社の認定要件に合う外部業者に委託し、危険有害性評価情報の提供と定期的な監査により、廃掃法の遵守を確認しています。
※ 日油のゼロエミッションの定義:(最終埋め立て処分量/廃棄物等発生量)×100≦0.10
関連法令の遵守と適応
国際的な化学物質管理への対応
化学物質については世界的に管理が強化されています。持続可能な開発を実現するために、2002年の環境開発サミット(WSSD)で「2020年までに化学物質が人の健康と環境に及ぼす有意な悪影響を最小化する」ことが世界共有の目標となりました。これに基づいて新興国も含めリスクベース管理の普及・定着およびGHS※の普及が促進されています。化学物質については製造から廃棄までサプライチェーン全体でリスクを管理する必要性が高まっており、化学物質が持つリスクおよびその管理に関する情報は顧客や消費者を含めた社会一般に公開されることが求められています。
日油グループでは、化学物質管理強化の流れの中、各国・各地域で定められた法律等に準じた対応を行っています。そのために日油では2020年度から全社SDS作成支援システムを導入、構築し、SDSの全社一元管理を始めています。
※ Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicalsの略称で、化学品の危険有害性を
世界的に統一された一定の基準に従って分類し、絵表示等を用いて分かりやすく表示したもの。
国内対応
国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」および「労働安全衛生法(安衛法)」で新規化学物質の事前届出制度が定められています。適切な届出を行うために新規化学物質を製造開始する際には設備・環境安全統括室が法対応の確認を行い、また、確認を受けた製造・輸入量の超過を未然に防ぐよう内部監査などにより管理を徹底しています。さらに関連法規に対する担当者の教育を実施し常に最新の情報を共有するように努めています。
一般化学物質製造実績数量の報告に関しては、ユーザーの皆さまのご協力を得て適切に行っています。化学物質のリスク等の情報開示については業界の自主的な化学物質管理活動( JIPS:Japan Initiative of Product Stewardship)に参加して積極的に取り組んでいます。 さらに(一社)日本化学工業協会が推進する「LRI(長期自主研究支援活動)」に参加し、企業が“社会のニーズに応える”という観点で安心・安全につながる研究を支援し、社会的問題の解決に協力しています。
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新規化学物質教育(先端技術研究所) -
新規化学物質教育(大分工場)
REACH対応
REACH※は、EU域内における化学物質の総合的な登録、評価、認可、制限に関する制度です。その目的は、「人の健康と環境の保護」、「EU化学産業の競争力の維持および向上」などであり、EU域内に化学物質を輸出する際には、ほとんどすべてが対象となります。日油グループでは、EU域内向けの輸出も活発に行っていて、対象物質についてはその輸出量に応じた対応を行っています。業界団体、関係省庁より最新の情報を入手し、適切な対応を心掛けています。
※ Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicalsの略。EUで定められた化学品管理規制で、
化学品の登録、評価、認可および制限に適用される。
その他の国や地域
米国はもちろんのこと最近、化学物質管理に関する法整備が進んできた韓国、中国、台湾をはじめとしたアジア諸国への輸出についても関係する最新情報を収集するとともに、適宜、適正な対応を行っています。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)の適正管理
日油グループは「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」に基づきPCB廃棄物を適正に保管・管理するとともに、法令に従い処理業者に委託して処理を行っています。高濃度PCBに関しては、処理の最終期限である2023年3月末までにすべて処理を完了しています。低濃度PCBに関しては、塗膜に含有しているPCB成分も含めてすべての含有機器の調査は完了し、2027年3月末の処理期限に向けて、機器の交換と塗装の変更を計画的に進めています。
環境関連法令の遵守状況
環境関連法令の違反はありませんでした。
顧客の安全
アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)
JAMP※は化学物質等の情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための具体的な仕組みをつくり普及させることを目的として2006年に設立された協議会です。日油グループではJAMPが推奨する化学物質情報を伝達するための情報伝達ツールであるchemSHERPAを活用して川下ユーザーに情報提供をしています。
※ Joint Article Management Promotion-consortium(アーティクルマネジメント推進協議会)の略。理念に賛同する17の企業
が発起人となって2006年9月に業界横断の活動推進主体として発足。
日油全社SDS作成支援システムの構築と運用
GHSとは化学物質および混合物の健康、環境、物理化学的危険有害性を一定の基準に従って分類するための判定基準であり、この情報はSDSおよびGHSラベルに最新の情報を反映させ、ユーザー、販売代理店、輸送事業者など化学物質を取り扱うすべての関係者が安全に対応できるよう注意喚起しなければなりません。そこで日油では2020年度から全社SDS作成支援システムを導入、構築し、SDSを全社一元管理しています。このシステムは全社サーバーで使用化学物質を一括で管理し、主要各国の法令変更内容をタイムリーに各事業部門が発行しているSDSおよびGHSラベルに対応させ、顧客に対し常に製品の最新な化学物質情報を提供することができるシステムです。2023年度からの化管法改正への対応は完了しましたが、透明性と可視化を向上させるために、化学物質の使用状況や取り扱いの履歴などの重要な情報を追跡・管理するため、システムの機能拡充にも取り組んでいます。
PRTR
PRTR法※対象物質
国内グループの2023年度の排出量は167.0トンで、前年度の143.3トンから約17%増加となりました。これにより、中期目標の基準年度である2010年度の269トンから約38%の削減となりました。
PRTR法対象物質のうち、10トン以上は表の通りです。
※ 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律。本報告書では、「特定化学物質の環境への排出量
の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(通称:化管法)」をPRTR法と表記しました。
政令番号 | 名称 | 排出量(t/年) |
---|---|---|
300 | トルエン | 42.8 |
186 | ジクロロメタン | 38.3 |
128 | クロロメタン | 19.8 |
392 | ノルマルーヘキサン | 15.5 |
83 | クメン | 15.0 |
総排出量 | 167.0 |
PRTR法対象物質の排出量削減施策
日油は、PRTR法対象物質の排出量を毎年170t以下にすることをKPIに掲げています。特に、環境排出量の多い物質の削減に向けて、PRTR法対象物質を使用しない製法の検討を行っています。代替物質や環境に配慮した製法の採用により、排出量を削減することを目指しています。また、排出量の回収率を向上させるために、回収装置の運転条件を最適化しています。定期的なメンテナンスや適切な運転管理を行うことで、効果的な回収が実現され、排出量の削減につなげています。
日油は引き続き、PRTR法対象物質の排出量削減に取り組み、より環境に配慮した製造活動を推進していきます。これにより、持続可能な社会の実現に貢献し、地球環境の保護に努めていきます。