化学物質管理/汚染予防

国際的な化学物質管理への対応

 化学物質については世界的に管理が強化されています。持続可能な開発を実現するために、2002年の環境開発サミット(WSSD)で「2020年までに化学物質が人の健康と環境に及ぼす有意な悪影響を最小化する」ことが世界共有の目標となりました。これに基づいて新興国も含めリスクベース管理の普及・定着およびGHS※の普及が促進されています。化学物質については製造から廃棄までサプライチェーン全体でリスクを管理する必要性が高まっており、化学物質が持つリスクおよびその管理に関する情報は顧客や消費者を含めた社会一般に公開されることが求められています。
 日油グループでは、化学物質管理強化の流れの中、各国・各地域で定められた法律等に準じた対応を行っています。そのために日油では2020年度から全社SDS作成支援システムを導入、構築し、SDSの全社一元管理を始めています。

※Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicalsの略称で、化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類し、絵表示等を用いて分かりやすく表示したもの。

国内対応

 国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」および「労働安全衛生法」で新規化学物質の事前届出制度が定められています。
 適切な届出を行うために新規化学物質を製造開始する際には設備・環境安全統括室が法対応の確認を行い、また、確認を受けた製造・輸入量の超過を未然に防ぐよう内部監査などにより管理を徹底しています。さらに関連法規に対する担当者の教育を実施し常に最新の情報を共有するように努めています。
 一般化学物質製造実績数量の報告に関しては、ユーザーの皆さまのご協力を得て適切に行っています。
 化学物質のリスク等の情報開示については業界の自主的な化学物質管理活動( J I P S:Japan Initiative of Product Stewardship)に参加して積極的に取り組んでいます。
 さらに(一社)日本化学工業協会が推進する「LRI(長期自主研究支援活動)」に参加し、企業が“社会のニーズに応える”という観点で安心・安全につながる研究を支援し、社会的問題の解決に協力しています。

REACH対応

 REACH※は、EU域内における化学物質の総合的な登録、評価、認可、制限に関する制度です。その目的は、「人の健康と環境の保護」、「EU化学産業の競争力の維持および向上」などであり、EU域内に化学物質を輸出する際には、ほとんどすべてが対象となります。
 日油グループでは、EU域内向けの輸出も活発に行っていて、対象物質についてはその輸出量に応じた対応を行っています。業界団体、関係省庁より最新の情報を入手し、適切な対応を心掛けています。

※ Registration, Evaluation, Authorization & Restriction of Chemicalsの略。EUで定められた化学品管理規制で、化学品の登録、評価、認可および制限に適用される。

その他の国や地域

 米国はもちろんのこと最近、化学物質管理に関する法整備が進んできた韓国、中国、台湾をはじめとしたアジア諸国への輸出につきましても関係する最新情報を収集するとともに、適宜、適正な対応を行っています。

アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)

 JAMP※は化学物質等の情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための具体的な仕組みを作り普及させることを目的として2006年に設立された協議会です。日油グループではJAMPが推奨する化学物質情報を伝達するための情報伝達ツールであるchemSHERPAを活用して川下ユーザーに情報提供をしています。

※ Joint Article Management Promotion - consortium(アーティクルマネジメント推進協議会)の略。理念に賛同する17の企業が発起人となって2006年9月に業界横断の活動推進主体として発足。

日油全社SDS作成支援システムの構築と運用

 GHSとは化学物質および混合物の健康、環境、物理化学的危険有害性を一定の基準に従って分類するための判定基準であり、この情報はSDSおよびGHSラベルに最新の情報を反映させ、ユーザー、販売代理店、輸送事業者など化学物質を取り扱うすべての関係者が安全に対応できるよう注意喚起しなければなりません。
 そこで日油では2020年度から全社SDS作成支援システムを導入、構築し、SDSを全社一元管理しています。このシステムは全社サーバーで使用化学物質を一括で管理し、主要各国の法令変更内容をタイムリーに各事業部門が発行しているSDSおよびGHSラベルに対応させ、顧客に対し常に製品の最新な化学物質情報を提供することができるシステムです。今後さらにバージョンアップを進め、2023年度からの化管法、2024年度からの安衛法改正にも迅速に対応していく予定としています。

新規化学物質等の製造・販売・輸出・輸入の管理組織体系図

新規化学物質等の管理フロー

新規化学物質等の管理フロー図

新規化学物質等の管理フロー確認事項表

ステージ 主な確認事項
1 ①品質計画(使用条件及び環境への影響,他社品質,顧客要求性能,セールスポイント),②商標・特許,国内外法規制対応計画,③開発計画(体制・日程・研究費用・安全性試験費用等),④製造計画(製造工程,研究・試作設備等),⑤販売・輸出計画,⑥損益計画
2 ①市場性・商品性(機能性,安全性,容器・梱包,輸送方法,産業廃棄物対策,製造・販売コスト,販売価格,省エネルギー等)の詳細確認,②製造工程および分析検査方法確立,③GLP,GMPの必要性調査,④特性値・反応および爆発危険性の調査,⑤安全性試験費用等のチェック,⑥新規化学物質申請(化審法,安衛法),⑦CAS,TSCA,HCS,CEPA,WHMIS,EINECS,FD&C Act等の調査,⑧SDS,警告ラベル,表示・標識,取扱説明書,各種毒性情報の確認,⑨セールスマニュアル,⑩契約内容,⑪特許・商標出願,⑫文書記録の保存
3-1 ①クリーナープロダクション(廃棄物の減少又は発生防止)の評価,②機器・プロセス・作業(含健康障害)の安全防災SA,③投資効果判定
3-2 ①労働安全衛生法,②高圧ガス保安法,③消防法,④火薬類取締法,⑤石油コンビナート等災害防止法,⑥大気汚染防止法,⑦オゾン層保護法,⑧省エネ関連法,⑨水質汚濁防止法,⑩騒音規制法・振動規制法,⑪悪臭防止法,⑫廃掃法,⑬海洋汚染防止法,⑭建築基準法,⑮毒物及び劇物取締法,⑯薬機法,⑰食品衛生法,⑱化審法,⑲農薬取締法,⑳放射線障害防止法,㉑港則法,㉒航空法,㉓道路運送法,㉔工場立地法,㉕火災予防,環境汚染防止等の地方条例
4-1 ①危険有害性の事前確認,②当該物質の法規制チェック,
③SDS,警告ラベル,表示・標識,取扱説明書他の人手確認
4-2 ①建築基準法,②消防法,③化審法,④火薬類取締法,⑤高圧ガス保安法,⑥石油コンビナート等災害防止法,⑦省エネ法,⑧電気事業法・ガス事業法,⑨JIS,⑩リサイクル法,⑪廃掃法,⑫化審法,⑬安衛法(第57条の4・有機則・特化則・4アルキル則・鉛則・粉塵則・電離則),⑭薬機法,⑮毒物及び劇物取締法,⑯食品衛生法,⑰農薬取締法,⑱放射線障害防止法,⑲SAの実施・SOP・健康障害措置,⑳PM体制,㉑QA(ISO 9000シリーズ・JIS Z9900シリーズ),㉒SDS・警告ラベル・表示標識・取扱説明書等の完成
4-3 ①火薬類取締法,②高圧ガス保安法,③毒物及び劇物取締法,④消防法,⑤放射線障害防止法,⑥鉄道営業法,⑦道路運送車両法,⑧道路法(水底トンネル),⑨船舶安全法,⑩港則法,⑪海洋汚染防止法,⑫海上交通安全法,⑬航空法,⑭郵便法,⑮その他(携行書類・資格・車両・容器・積載基準・表示標識)
4-4 ①表示・標識の注意事項確認,②貯蔵上の注意事項確認
5 ①一般及び工業顧客=警告ラベル,表示標識,取扱説明書の配布,②工業顧客=SDS,品質保証書,契約書,業の登録確認等の実施
6 ◎運送・貯蔵
①UN,IMO(IMDG・IBC・BCの各コード),ICAO,IATA,
②欧州=ADR,RID,EC指令,③米国=49CFR,CHEMTREC,NFPA,HCS 等
◎労働安全
④HCS,SDS,警告ラベル,表示標識,取扱説明書 等
◎消費者安全
⑤同上およびPL保険,保証書(保証責任の限定)
◎環境・公害
⑥米国=CAA,CWA,RCRA,CERCLA,SARA,TSCA,HCS,
⑦カナダ=CEPA,WHMIS,⑧欧州=EEC第6,7次修正指令 等
◎貿易管理
⑨化学兵器原料,⑩麻薬原料,⑪有害化学物質,⑫戦略物資(戦略物資管理運営基準)

化学物質排出量削減の取り組み

 国内グループ各社は、PRTR対象物質の把握・届け出を行い、その化学物質排出量削減に取り組んでいます。

※1Pollutant Release and Transfer Registerの略。環境汚染の恐れがある物質の排出量や移動量を登録する制度。

日化協自主管理物質

 国内グループでは、(一社)日本化学工業協会が推奨する自主管理物質についても排出量の把握・削減に取り組んでいます。2022年度の排出量は79トンで、前年度の109トンから約28%の減少となりました。

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