α-GPCは、リン脂質の一種であるホスファチジルコリン(PC)より2個の脂肪酸を脱アシル化した水溶性化合物です。
学名では「sn-グリセロ(3)ホスホコリン」と呼ばれています。
分子構造
特徴
外観 | 白色粉末 |
風味 | 無臭で弱い甘味 |
溶解性 | 任意に水に溶解 |
物性 | 非常に潮解性が高い、水溶液は無色透明 |
α-GPCは母乳など、生体内に普遍的に存在する物質であり、安全な成分です。
また、食品としての安全性も確認されています。
急性毒性試験(LD50): |
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母乳に含まれるα-GPC
(Am J Clin Nutr 1996;64:572-6) |
コリンは赤ちゃんにとって重要な成分です。母乳にはコリン分子がたくさん含まれています。α-GPCは母乳における主要なコリン分子種の一つです。 |
コリン補給剤の種類とその特徴
成分名 | 分子量 | 特徴 |
α-GPC | 256 | 血液脳関門(BBB)を通過する 摂取量2.5倍 |
PC (ホスファチジルコリン) |
753 (脂肪酸C18) |
BBBを通過する 摂取量7.5倍 |
塩化コリン | 140 (コリン:104) |
BBBを通過する トリメチルアミンによる魚臭様汗と体臭 |
アセチルコリン | 146 | BBBを通過しない |
CDP-コリン (シチコリン) |
488 | BBBを通過する 医薬品(意識障害治療薬) |
α-GPCは、血液脳関門(BBB)を通過するため、コリン補給剤として中枢に作用します。
PC(ホスファチジルコリン)は90%以上がリンパ管より吸収されますが、α-GPCの多くは門脈から取り込まれるため、より効率的に吸収されると言えます。
α-GPCの効果について、日油ではいち早く目を付けて研究に取り組み、様々なデータを取得しています。
健常な成人にα-GPC1,000mgを摂取させ、血中のコリン濃度、成長ホルモン濃度と遊離脂肪酸濃度を測定した。α-GPC摂取群は、プラセボ群に比べて、コリン濃度、成長ホルモン濃度、遊離脂肪酸濃度ともに有意な上昇が見られた。
※プラセボ群 n = 8 α‐GPC群 n = 6
α‐GPCの摂取により、コリンが体内に補給され、成長ホルモンの分泌を促進しています。また、成長ホルモンの働きにより、遊離脂肪酸の濃度も上昇しており、脂肪を燃やす準備が整っている状態になっています。
健康な成人に、α-GPC1,000mg摂取30分後から30分間有酸素運動(4METs)を行い、呼吸商を測定したところ、α-GPC摂取群はプラセボ群に比べてより高い脂質燃焼促進効果が認められた。
※呼吸商とは体内で栄養素が酸化されて発生した二酸化炭素と消費した酸素の容積比。
数字が小さい方が,脂肪燃焼の割合が高い
※4METsとは
身体活動の強度を表す単位(エネルギー消費量が安静時の何倍かを示す)
4METsの活動は、「いろいろな家事を同時に行う」、「子供と遊ぶ」、「ガーデニング」など多少負荷のある活動強度
中高齢女性に、1日あたりα-GPC 1,000mg摂取、および週3日の有酸素運動を4週間実施し、腹部皮下脂肪面積を測定したところ、試験前と比べて、減少傾向が見られた。
「α‐GPCの摂取+簡単な運動」 で脂肪の燃焼が促進されていることが確認できます。
ヒト皮膚由来の細胞にα-GPCを添加し、24時間培養を行った。α-GPC無添加の細胞との比較を行ったところ、肌のハリの指標であるT型コラーゲンの量と、肌の潤いの指標であるヒアルロン酸の濃度について有意な差が見られた。1.0μM,10μM という濃度は、動物実験時の血清中のα-GPC濃度に相当しており、生理的な血中濃度での効果が認められている。
α-GPCが、肌のハリ、ツヤについて効果を発揮することが確認できます。
e-スポーツを行う学生に、毎日のゲームプレイ1時間前を目安に1日あたりαGPCを600mgまたは 1,000mg 摂取してもらい、摂取前と摂取2週間後で、ゲーム前後にアミラーゼ活性、自律神経バランス、Nバックタスクを測定した。
※ VDT作業とは、パソコンやスマホ、タブレットなどディスプレイやキーボードなどの出力装置と入力装置で構成される機器を使用した作業
<ストレス軽減効果>
α-GPC摂取群は、プラセボ群に比べて、アミラーゼ活性上昇率の抑制された。
アミラーゼ活性上昇率の変化率=2週間後の上昇率÷初期値の上昇率
<自律神経バランスの調整効果>
プラセボ群は自律神経バランスの乱れがみられたが、α-GPC摂取群は自律神経バランスの乱れが抑制された。
<集中力・注意力の向上効果>
1-backにおいて、α-GPC摂取群はゲームプレイ2時間後の回答時間がより短縮した 。ゲーム前後での回答時間変化=ゲームプレイ2時間後の回答時間÷ゲームプレイ開始時の回答時間
※ Nバックタスクとは、一定の間隔で異なる記号が次々と表示される画面を見ながら、N個前に表示された記号と現在表示されている記号が一致しているか一致していないかを回答する測定方法
e-スポーツを行う学生にα-GPC1,000mg(単回)を摂取させ、指定のゲームをプレイしてもらったところ、α-GPC摂取群は、プラセボ群に比べて、ゲーム全体のパフォーマンス指標であるバトルスコアが高い傾向が認めれた。
e-スポーツを行う学生に、毎日のゲームプレイ1時間前を目安に1日あたりα-GPCを300mg摂取してもらい、摂取前と摂取4週間後で、トレイルメイキングテスト(TMT-B)を測定した。α-GPC摂取群は、プラセボ群に比べて、TMT-Bの試験時間の短縮傾向が見られた。
※ トレイルメイキングテスト(TMT-B)とは、画面にランダムに表示された数字と文字を交互に結んでいく測定方法