トップメッセージ

革新と未来を融合し、新たな価値を創造します。

   代表取締役社長 沢村孝司

 日油グループは、バイオから宇宙まで、化学の力で新しい価値を創造する企業グループとして、人と社会に貢献することを経営理念とし、「ライフ・ヘルスケア」「環境・エネルギー」「電子・情報」の目指す3分野において独創性のある製品を多角的に展開しております。

 新型コロナウイルス感染症は概ね沈静化し、世界的な規模での大きな転換期を迎えています。コロナ禍によって引き起こされた大きな変化は、人々の生活と社会のあり方に深い影響を与えました。この出来事から学び、新たな価値観の構築と技術の進歩に基づいて、未来へ向けた戦略的な方針として「新中期経営計画NOF VISION 2030」を策定しました。日油グループは、革新的なアプローチと積極的な変革を通じて、グローバルカンパニーとしての飛躍を目指します。技術の進歩によってもたらされる可能性を最大限に活用し、市場の変化に迅速に対応しながら、新たなニーズに応える商品やサービスを提供します。価値観の変化を捉えながら、社会の要求に応えるために、持続可能性と社会的責任を重視したビジネス活動を推進します。

 いま、気候変動をはじめとする地球環境問題や人権問題など、さまざまな社会的課題への関心が急速に集まっています。日油グループは、社会の変化と真摯に向き合い、化学の力で新たな価値を創造し、すべてのステークホルダーの皆さまの信頼にお応えし続けることで、安心で豊かな社会の実現に向けて挑戦してまいりたいと存じます。日油グループへの一層のご支援と忌憚のないご意見を賜れば、幸甚でございます。

2022中期経営計画を振り返って

2025年度の数値計画を3年前倒しで達成しました

 2022年度は売上高2,177億円、営業利益406億円、営業利益率18.7%、ROA14.4%、ROE14.8%となり、いずれも過去最高値となりました。売上高は、機能化学品セグメントは原燃料価格の高騰を受けた販売価格の改定と、堅調な需要に支えられ、対前年180億円のプラス、ライフサイエンスセグメントは、主にDDS医薬用製剤原料の伸長により、対前年72億円のプラスとなりました。また、化薬セグメントは前年並みとなりました。利益面では、特にライフサイエンスセグメントの売上高増加にともない、営業利益も対前年で50億円のプラスとなり、過去最高益となりました。
 NOF VISION 2025の数値計画を3年前倒しで達成できた理由としては、DDS事業が計画通りに伸長したことに加え、新型コロナウイルス感染症に関連した需要、特にワクチン需要が寄与しました。また、基盤強化ステージにおける低採算事業の収益基盤強化を推進した効果もあります。具体的には、機能化学品セグメントにおいて、コモディティ化した製品を中心に採算改善の価格改定を実施しました。また、採算の厳しかった機能フィルム事業からは撤退しました。その他、省人化投資や生産・販売品目の見直しなどの効率化を強力に進め、販売価格の適正化を推進し、収益基盤の強化を図りました。事業環境が激しく変化するなかで、低採算事業の収益基盤を強化し、収益力を強靭化できたことが、全体の数値計画を前倒しで達成できた要因であると考えております。

新中期経営計画 NOF VISION 2030

次の飛躍に向け、日油グループの 2030年度のありたい姿を設定

 当社グループは、2030年度のありたい姿を「豊かで持続可能な社会実現のため『ライフ・ヘルスケア』『環境・エネルギー』『電子・情報』の3分野において、化学の力で新しい価値を継続的に創出する企業グループ」と定めました。2030年度の営業利益目標を600億円とし、過去6年間に達成した収益拡大の実績を踏まえ、新しい価値を継続的に創出する企業グループを目指してまいります。
 2 0 3 0 年度のありたい姿に向け、新たに「NOF VISION 2030」を策定いたしました。ありたい姿に到達するために、2023年度を起点とした2025中期経営計画をStageⅡ、収益拡大ステージとし、2028中期経営計画をStageⅢ、事業領域拡大ステージと位置づけました。営業利益の目標として、2025年度に460億円、2030年度に600億円を目指し、さらなる成長に向けた事業運営を行ってまいります。

経営理念体系を刷新して、新たな成長を目指してスタート

 いま、事業環境を俯瞰すると、大きく2つの変化に直面しています。1つは、気候変動や人権課題などの社会的課題の解決に向けた行動が企業の責務と認識されるようになったことです。2050年のカーボンニュートラル達成やサプライチェーンにおける人権尊重は、事業成長に不可欠です。もう1つは、テクノロジーの革新です。IoT、AI、量子コンピューターなどの進化が社会や事業に大きな影響を与え、医薬・バイオ分野や電気自動車、5Gなどの技術が急速に進化しています。新しい価値を創造するためには、テクノロジーの進展を敏感に察知し、新技術や製品の開発に挑戦する必要があります。
 これら2つの変化に加え、「不確実が当たり前」となった社会の様々な変化に適切に向き合っていくことが求められる環境下、企業を支える土台である「人」の成長に根幹をなす経営が、ますます重要になると判断し、経営理念体系を刷新しました。
 当社グループの長い歴史の中で大切にしてきた理念や指針を、現在と将来を見つめて、今の私たちが拠って立つ経営理念体系としてまとめました。当社の使命およびあるべき姿を経営理念にまとめ、経営理念を実践する上で、当社グループが重視する3つの価値観を定めました。また、経営理念と価値観に基づき、業務において具体的な行動を実践するための心構えを行動規範に定めました。

会社全体を2030年度の「ありたい姿」に向かって力強く進む強靭な組織体制に変革

 新たなスタートに合わせて、本年4月1日付にて機構改正を実施しました。目指す3分野「ライフ・ヘルスケア」「環境・エネルギー」「電子・情報」における市場ニーズの変化に応え、お客さまへの新たな価値の提供を目指した事業部門の再編および経営環境の変化などへの対応力強化を目的に、スタッフ部門の機能の高度化、最適化に向けた再編を実施しました。
 機能化学品セグメントでは、旧油化事業部と旧化成事業部を統合して「機能材料事業部」とし、営業統合による提案力の強化により、成長分野への新たな需要を開拓してまいります。医薬・医療・健康セグメントでは、旧DDS事業部と旧ライフサイエンス事業部を統合して新たな「ライフサイエンス事業部」とし、生体適合性素材の品質保証体制を強化し、医療分野への展開を加速してまいります。また、食品事業部を「機能食品事業部」とし、機能を基軸とした事業領域へのシフトを進めます。なお、同セグメントは、従前のライフサイエンスセグメントから、より事業内容を分かりやすくお伝えするために、2024年3月期より改称いたします。これらの事業部の統合は、いずれも「目指す3分野」における競争力の強化を図るものです。事業のシナジー創出を強固なものとして新製品開発、新市場開拓を加速します。

 スタッフ部門は、コンプライアンスや品質管理に関わる信頼性をより高めるとともに、対外発信力の強化を目的に、「法務部」、「コーポレート・コミュニケーション部」、「技術本部」を新設しました。特に、コーポレート・コミュニケーション部におきましては、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを積極的に図ってまいります。
 これらの組織体制の変革により、2030年度のありたい姿に向かって力強く進んでまいります。

「NOF VISION 2030」 StageⅡ(2025中期経営計画)で 700億円の戦略投資枠を設定

 2025中期経営計画では、「NOF VISION2030」で描く2030年度のありたい姿の実現を目指し、3年間を通じての経営方針に「実践と躍進」を掲げています。2022中期経営計画で取り組んだ収益基盤強化施策を結実し、収益拡大に向けた施策を「実践」するとともに、未来を構想して事業の柱となる種をまくため、「戦略投資」を推進し、2030年度のありたい姿に向け「躍進」を遂げるべく進めてまいります。
 2030年度のありたい姿を実現するために、2025中期経営計画において着実に遂行すべき重要な事項は2つあります。1つは、2022中期経営計画において培ってきた成果を確実に収穫することです。そして、もう1つは、将来の展望を見据えながら、2028中期経営計画に向けて意欲的に新たな計画の種をまくことです。これらを確実に実現するため、従来の枠組みとは別に、700億円の戦略投資枠を設定しました。既存投資と合わせた投資枠は1,100億円超となります。
 戦略投資における設備投資、研究開発そして人的投資の内容について、それぞれ説明します。

設備計画
 2025中期経営計画における設備投資としては、2022中期経営計画期間実績のおよそ3倍の規模を計画しています。DDS医薬用製剤原料の製造設備増強に重点をおき、設備投資総額695億円のうち約50%は医薬・医療・健康セグメントの設備増強に充てます。機能化学品セグメントでは、化粧品原料や防曇剤などの需要成長が続く分野への製造設備新設や増強に、総額の約35%を充てます。
 設備投資のうち、製造設備に関連する投資額は479億円を想定しており、M&Aを含めた機動的な投資枠を含んでいます。M&Aにつきましては、基本的に規模を追うのではなく、お客さまへのサービス向上、当社既存事業とのシナジーの発揮、新規事業領域進出などの観点で検討しています。また、生産性向上のため、自動化・省人化の促進による業務効率改善、生産・営業におけるデータ利活用拡大への投資を進めます。
 環境対応への投資については、製造設備におけるフロン規制への対応、CO2削減にも寄与する製造設備の省エネルギー・効率化への投資を進めます。

研究開発投資
 2025中期経営計画における研究開発投資の総額は256億円で、2022中期経営計画期間の実績に対して約40%増加する計画です。また、次期中期経営計画で事業拡大を目指すために、コーポレート研究に携わる2025年度の研究開発人員を2022年度に対して2倍強に増やします。2025年度の研究開発全体の人員は、2022年度に比べて約20%増加する計画です。
 新規事業創出のために社外協創、公募などを活用した有望テーマの発掘を進めるとともに、MI環境整備と人材育成などの施策により研究開発を進めてまいります。また、産官学連携の推進としてオープンイノベーションへの積極的な参画を継続してまいります。新規事業の創出に向けた研究開発を推進するため、2021年度より産学連携プロジェクトを立ち上げ、パートナーの公募を行っております。2023年度においては、エレクトロニクス素材、健康食品素材分野で採択テーマの委託研究を開始いたします。2025中期経営計画期間中には、さらに分野を広げて産学委託研究公募を継続してまいります。

人的投資
 人的資本につきましては、ダイバーシティ、エンゲージメントを新たな重要な柱として施策を展開してまいります。「企業は人なり」との基本思想の下に、人材の成長を後押しする積極的な人的資本投資を実施してまいります。 
 ワークエンゲージメントの高い多様な人材を生み出す施策として、従業員の自律的な成長を図るためのキャリアデザイン構築支援、DX人材育成のための研修制度の新設、グローバル人材育成のための研修制度の拡充などを行います。さらに多様な人材の活性化として、世間に先駆けて定年年齢の完全65歳への引き上げを実施しました。また、福利厚生施設の更新も進めてまいります。

2025中期経営計画の数値目標
 2025年度は営業利益460億円、営業利益率18%以上、ROA13%以上、ROE12%以上を計画し、2030年度のありたい姿に向け、各種施策に取り組んでまいります。グループ全体での2025年度売上高2,550億円に向けて、各セグメントでの成長を見込んでおります。2023年度の連結の営業利益と営業利益率については、戦略投資の費用増加などにより対前年で下方となりますが、2025年度には各セグメントで2022年度を超えるレベルまで成長する見込みです。

財務戦略
 戦略投資および既存投資は、2025中期経営計画期間中の累計の営業キャッシュ・フローおよび政策保有株式売却による資金を含む手元資金の範囲内で実施します。政策保有株式は、純資産比率15%以下を目標に売却を進めます。株主還元の方針としては、資本効率向上を意識し、戦略投資とのバランスを取りながら株主還元の維持向上に努めます。総還元性向50%程度を2025年度の目標水準とし、安定的な利益還元の維持継続を基本とする配当の実施とともに、自己株式取得・消却を必要に応じ実施します。 

サステナビリティ課題への取り組み
 グローバルな社会課題について戦略的に取り組むために、私が委員長を務めるCSR委員会に社外を含むすべての取締役が参加して、対応を検討しています。加えて、今年度、役員報酬体系にESG指標を組み入れました。これによりESGに関わる取り組みの実効性を高めるとともに、コーポレート・ガバナンスを強化します。
 気候変動につきましては、脱炭素のイノベーションに挑戦します。産学連携プロジェクトによる、バイオマス由来原料や未利用廃熱を有効活用するための研究開発を昨年度に開始しており、引き続き注力してまいります。また、当社グループでは、地球温暖化の緩和に関連する分野に対して、様々な製品を提供しております。電気自動車には電子部品用分散剤や電動ユニット用潤滑剤、風力発電には生分解性作動油や防錆処理剤などの製品を提供することにより、地球温暖化の緩和に貢献してまいります。

企業は人なり

 企業成長において最も重要なものは人材です。「企業は人なり」の精神を再度認識し、従業員一人ひとりが明確な目的意識と責任をもって主体的に仕事に取り組むことができ、仕事のやりがいと実感を手にすることができる組織運営を行うために、コミニュケーションの重要性を全社員が認識し、常に風通しの良い組織運営を目指します。

2030年に向けて

 2023年度を初年度とする2025中期経営計画は、ウクライナ危機の影響が見渡せず、原燃料の価格高騰や半導体の供給不足、サプライチェーンの混乱等の難しい事業環境に直面しておりますが、変化を注視しつつ、「NOF VISION 2030」のStageⅡ(収益拡大ステージ)を確実に進めてまいります。
 変わりゆく社会の中で、「企業の社会的な責任(CSR)」は、変わることなく重要な課題です。SDGs達成の一翼を担い、持続可能な社会の実現に貢献することは、企業市民としての責務であると同時に、挑戦すべき課題であります。企業として収益の拡大とともに、社会全体の富も大きくしていく発想が大切であり、日油グループは、CSR活動の施策を着実に実施し、持続可能な社会の実現に向けて貢献を続けてまいります。

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